終わらない鬼ごっこ。 ――side picky――


「ここまでおいでおしりペーンペン」

謎の手紙を残したまま、兄ちゃんは消えた。

「ネス、元気?…僕?僕は元気じゃないよ。…普通…かな」

やっぱさ、あんなに頼りなくったって一応…兄ちゃんは兄ちゃんだったし。

兄ちゃんが居なくなっても、ウチの中は相変わらずだった。

母さんも父さんも、兄ちゃんの心配なんかコレっぽっちもしなくて
しかも母さんは…カラーマンとかいう人と『ふりん』して、家を出て行った。

父さんは今まで以上にイライラするようになって、相変わらずネスの家に立ち退きを要求している。

………。

結局、兄ちゃんが居なくなって、僕は独りぼっちになっていた。

ネスは今でも兄ちゃんを探してくれてるらしいけど、ネスの変な力を使っても、兄ちゃんは見つからないらしい。
ネスは兄ちゃんについて、何か知ってるみたいだけど、ネスはそれを言おうとはしてくれないし、僕もなんとなく聞きたくない。
…聞いたら、兄ちゃんが二度と帰ってこないということが明白になりそうで怖かったんだ、正直。

兄ちゃんがいなくなってから数日経って、ネスの友達の父さんが行方不明になったとか何とかで、ネスは何日か家を空けていた。

僕はもう、兄ちゃんを探すことくらいしかすることがなくなっていた。

新しい玩具よりも、美味しい御飯よりも、僕は兄ちゃんに会いたかったんだ。

父さんは、兄ちゃんのことなんかおかまいなしで、相変わらずネスの家に行ってはネチネチと絡んでいた。

…正直、僕は両親が大嫌いだったんだ…と思う。

結局、僕にも兄ちゃんにも兄ちゃんと僕しかいなくて
たまたま貧乏くじを引いて、母さんや父さんのストレスの捌け口になってたのが兄ちゃんだったんだと思う。
…ほら、多分兄ちゃんの方が先に生まれたし、どんくさかったから。

「ここまでおいで、おしりペーンペン」

この手紙を、兄ちゃんはネス宛に出した。
母さんでも父さんでも僕でもなくて、ネスに。
でも、入っていたのはウチの郵便受けだ。多分、僕にも読んで欲しかったんだと思う。でも僕宛に出すと、誰よりも先に母さんがこの手紙を読むからネス宛にしたんじゃないのかな?

………。

ねぇ、兄ちゃん。
今、何処にいるのさ?

数日経って、ネスが自宅に帰ってきた。
何故だか凄く不機嫌な顔をしていた。
そんでネスの奴、僕を見つけてこんなこと言うんだ。

「…ピッキー、ポーキーは…もう帰って来ない…」

嘘だろ?
なんでお前がそんなこと言うんだよ。
兄ちゃんは帰ってくるよ!絶対に!
なんでそんなこと言うんだよ!
証拠はあんのかよ!
僕には兄ちゃんしかいないのに…。
その兄ちゃんが帰ってこないってどーゆーことだよ!!!

「…僕だって!」

ネスがらしくもなく叫んだ。

「…僕だって…本当はこんなこと言いたくないよ…」

………。
ネスの奴、泣いてら。

「…本当は博士に本当の事聞きたいよ…」

ネスは古ぼけた赤いヨーヨーを握り締めながら、泣きじゃくりながら、吐き出すように言った。
…ってか博士って誰?

「…なのに…なのに博士は教えてくれないんだ!!!」

ネスはヨーヨーを見た。
あれ?…なんか見覚えのあるヨーヨーだな…。


―――見ろよ、ピッキー!ネスから取ってきたんだ!カッコイイだろ!?―――


何年か前に、兄ちゃんがそう言って散々自慢してきた、赤いヨーヨー。
僕はそれが本当は、兄ちゃんの誕生日プレゼントにネスがくれたものだってことを知っている。
で、そのお返しに兄ちゃんは何かを用意してたんだけど、それを包みごと母さんに捨てられて、泣いていたのも知っている。

「…それ、兄ちゃんの…?」

僕が聞くとネスは泣きながら頷いた。

「…少し前に…僕があげた…」

「…なんで…なんでそんなもんネスが持ってんだよ!兄ちゃんに…兄ちゃんに会ったのか!?」

ネスは黙って首を横に振った。

「…博士が…持ってた。…ポーキーに会ったって…これは返しておく…って…」

ネスは地面に膝を付いた。

「…わかんないよ…何処にいるんだよ…ポーキー…」

ネスはわぁわぁ泣いた。
僕も泣きそうになった。
だけど泣かなかった。
代わりに決めた。
兄ちゃんを探し出そう。

何年、何十年かかったっていい。

偉くなって、賢くなって、兄ちゃんを見つけよう。

だって僕には


兄ちゃんしかいないんだから。


<FIN>


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